スーパーブルーム  はじまり

 

初めてこの言葉を聞いたのは1月の終わり。

 

  『Super Bloom(スーパーブルーム)』って言ってね…

  この辺りの砂漠に雨が降ると、野生の花たちが

  それはそれはもう狂ったように咲きまくるんだ。

  気象条件が揃わないと見れないんだけど、

  今年は雨が多いから、もしかしたら…

  一面のカリフォルニアポピーが見れるかもしれない。

 

 

ここL.A.はほとんど砂漠だ。

大都市が砂漠と言うのはピンとこなかったけど、

「雨が降らなくていつでも映画の撮影ができる!

とハリウッドに映画の都を構えて発展したのだからそれもそうか。

 

 

意外に山に囲まれているけど、山はいつもカラカラに乾いて茶色い。

樹の生い茂った日本の山々に慣れ親しんでいるので、

乾いたブッシュに覆われた山は不思議な気がする。

 

 

 

 

 

 

2月に何日か雨が降り続き、久しぶりに青空が覗いた日、

その山々は突如美しい若草色に染まった。

まるで緑が薫ってくるよう。

(日本なら5月の季語なのに複雑)

スーパーブルームが起こっているというニュースも聞き始めた。

 

 

 

よし!今週末は野生の花を見に行こう!

 

思ったもののあまり郊外まで行く時間がなく、ポピーはあきらめて

近場のプレイサーイータ・キャニオン(Placerita canyon)へ。

 

 

トレイルに入ってみると野生のキュウリのツタや花。

さまざまな種類のセージの香りやローズマリーの香り。

 

足元には小さな小さな花たち。

ねこじゃらしの海。

なずなもひそやかに咲いていた。

 

遠くからは見えないけれど、

こんなにも小さな命の息吹に満ち溢れている。

その中で呼吸すると胸が洗われる思いがする。

 

 一面のポピーのような華やかさはないけれど、

穏やかでいてパワフルな命の祭典だった。

 

ポピーは見れなかったなあ…と思いつつ、

翌日ポートランドに向かう飛行機の中。

 

「空から見えるかもしれから、よく見てごらん。」

 

と言われ、どういうことかと窓の外を見ていると…

あちこちに黄色やオレンジの絵の具がちりばめられていた。

 

まさか空からこんな風に見えるなんて!

 

 

そして翌週、

強烈なオレンジの海に打ちのめされることになるのを

私はまだ知らない。